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あめのひ|朗読台本・フリー台本
しとしと。雨が降っている。カーテンを開けたご主人は、外の様子にため息を吐くと開けたばかりのカーテンを閉めた。
はやくはやくと鳴いてみれば、抜け殻のお布団にのろのろ戻ってくる。なにやらもごもご言っているようだが、ご主人も雨の中出かけるよりボクと眠る方がたのしいだろう。
ほらほら、撫でてもいいよ。と、ご機嫌に呼びかけても、にゃうにゃうぐるるとしかこの喉からは出ないのだけれど、ご主人には正しく伝わったらしい。よろよろ伸びてきた左手が慣れた手つきで自慢の毛並みを撫でていく。
わるくないぞ、雨の日。ごうんごうんとうるさい四角いやつも、ぶぉうぶぉうとうるさい薄っぺらいやつもきらいだけど、わるくない。
なぁ、ご主人。不貞寝する前にちらっとその顔を見せておくれよ。かわいいボクといっしょでしあわせだろう?
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